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Uncertain Odyssey


世界叙情記
by crescentadv
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カフカスの孤高の戦い

チェチェンの戦争は、ある意味昔ながらの戦争である。ほんとうに戦争らしい戦争ともいえる。戦争を賛美しているわけではないのだが、そこでは命がいとも簡単に失われ、それに対して誰も責任を負わない。プリミティブな戦いが、21世紀の今も、今のこの瞬間にも続いている。
 戦争らしいと書いた意味の一端は、そこにメディアがほぼいないからだ。メディアのいる戦場が、現代ではほとんどなのだが、チェチェンでは実質的にそれがほぼ不可能となっている。だから、時折潜入に成功した外国人が見る戦場は、当事者たちには圧倒的なリアルであるが、私たちには、映画の一場面のように映じることがあるのは、致し方ないともいえる。
 しかし、そこに生きているのは、明らかに私たちと同じ人間だ。私たち以上に人間味溢れる人々が、そこに生きている。民族の誇りを持ち、家族や親族、老人を敬い、歴史や文化を大切にし、平和に平凡な、しかし暖かみのある生をおくりたい。そんなささやかな望みを抱く、とても優しい人々でもある。
 だからこそ、それらのすべてが破壊されようとしたとき、彼らは圧倒的な相手に立ち向かった。それは、今も続いている。武器を取る戦いはもちろん、平和的な手段でも。
彼らは、ある大国によって、テロリストと呼ばれ、欧米や日本の多くの政治家やメディアも、沈黙を守っている。禍根を残す沈黙だ。
 しかし、私たちの評価などまったく興味がないかのように、若者たちは今日も戦い、命を落としている。この澄んだ目をした、素晴らしい人々が、彼らとは直接関係のないことのために死んでいくのだ。
 私たちは、いつまで沈黙を守るのだろうか。彼らと対峙したとき、私たちは人間として彼らの視線を受け止めることが出来るのだろうか。いや、そんな思いをも見透かしたような彼らの視線の彼方に、哀愁とともに私は希望と未来の力強い息吹を感じた。
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by crescentadv | 2005-11-22 20:27 | チェチェン
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