Uncertain Odyssey


世界叙情記
by crescentadv
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月の砂漠

 夏のガザは、世界のどこの夏とも同じで、いやそれ以上に素晴らしいところだ。地中海特有の滑るような大気を肌に感じながら、一日中撮影に明け暮れた日。夕日が網膜を焼き始める夕方になると、決まってビーチに向かった。昨今の紛争などもあり、またビーチで砲撃を受けて死んだ人が出たこともあり、例年の夏よりも人では少なかった。とはいえ、この宝物のような夕日とビーチでの時間を過ごすためには、わざわざ訪れてくる人は少なからずいる。いつもと同じように、波打ち際までテーブルが並び、家族連れが談笑し、男たちは水タバコを燻らせ、サッカーに興ずる。天変地異でもない限り、これからも続くであろうガザの日常。
 プラスチックのイスに腰掛けて、水平線に落ちていく大きな太陽を眺めていると、ふと視界の端に大きなものが動くのを感じた。そちらに顔を向けると、なんとラクダがゆっくりとこちらに向かって来るではないか。子供たちが群がり、大人たちは笑いながら遠巻きに眺めている。ここは、砂漠から遠くない、ラクダの世界なんだと改めて認識した。
 ラクダがビーチに寝そべり、ラクダ使いのおじさんも物憂げそうな表情で、佇んでいる。その向こうには、いい色に焼けた夕日が落ちていく。なんとも言えない、幻想的な風景だ。何物にも動じないようなラクダのいる景色を見ていると、どこか別の世界に入り込んでしまったかのような錯覚に陥った。

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by crescentadv | 2007-01-25 22:00 | パレスチナ
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