Uncertain Odyssey


世界叙情記
by crescentadv
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フセインのように死ぬ

イラク中部のカルバラーは、イスラームシーア派の人々が多かれ少なかれ、憧れ涙する聖地である。1200年以上も前に、預言者ムハンマドの娘婿・アリーの息子であるアル・フセインが、当時早くも血の争いの様相を呈していたイスラームを救おうと立ち上がり、敵に包囲されて一族諸共殉死した地であり、このフセインの死を受けて、シーア派は宗教的色彩を強めて今に至るのだ。彼の死を悼み、その命日には、盛大なお祭り(文字通りお祭りである)が、シーア派の人々の住む各地で開催される。
 イラクは、長い間それが禁止されていたせいもあり、先の戦争でサッダーム政権のたがが外れると共に、盛大に復活した。シーア派の人々の感情の爆発とでもいうべき姿は、泣き崩れ、叫び、自らを斬り付けて血を流しながら行進する姿に象徴されるが、そういった視覚的なものの内側には、たんにフセインをみすみす殺されてしまった悲しみや悔やみだけではない、よりおおきな意味があると私は感じた。
 常に少数派であり、政治的にも抑圧されてきた人々は、だが今大きな力をてにした。フセイン殉教の受難を自ら体感し、1200年前の灼熱の砂漠へ思いを馳せる人々には、さらなる苦難が待ち受けているような気がするが、フセインの血を受け継いだ人々は、その苦難をもまた乗り越えて未来を見据えて生きていくのだろう。
「アリーのように生き、フセインのように死ぬ」という言葉があるが、この言葉に彼らの精神的な面も含めたものが凝縮されているような気がする。そして、それは何故か海と大陸を隔てた地に生を受けた私の心をも、激しく拍つのだ。

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by crescentadv | 2005-12-24 19:53 | イラク
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