1999年11月、私はチェチェン共和国の首都、グローズヌイにいた。その数ヶ月前から、再びロシア軍との戦争が始まっていた。必死の思いでグローズヌイにたどり着いた私たちは、しかし戦況の悪化もあり、ほとんど自由には動けなかった。常にチェチェン独立派の兵士たちと行動を共にし、彼らの人柄の良さや敬虔な心、その純粋さに接し、日毎に彼らに惹かれていく自分があった。
すでにロシア軍の空爆などで、がれきの山と化していたグローズヌイで、彼らの陣地で世話になり、食事を与えられ、自由に撮影も許され、私たちはほんとうに手厚く遇されていた。しかし、そんな時間も長くは続かない。ロシア軍の大部隊がグローズヌイ郊外に迫っていた。日に日に、砲撃が増し、いつ首都で激戦が始まってもおかしくない状態、そんな中で私たちの存在は、彼らには重荷になっていたと思う。しかし、そんなことを全く感じさせなかった彼ら。カメラを向けると、精一杯の笑顔で応えてくれた彼ら。しかし、最後の数日は、彼らの動きも慌ただしく、その表情には日に日に緊張感が漲っていくのが、傍目にも明らかだった。私たちはもう少し残りたかったが、彼らは私たちの安全を最優先し、安全に逃がすために、大変な労力を払ってくれた。別れ際に何人もの兵士たちと固く交わした握手、そのぬくもり、生の鼓動を私は忘れることができない。 今、彼らの多くが死んでいったことを、私は知っている。愛する大地のために、家族のために、その文化を守るために、命を賭して戦い、殉教者となった男たち。彼らほど、人間らしく生きた人々を私は知らない。その地に平和が訪れることを祈り、またその地に出向いていくことを夢見ながら、それが私の生きる力にもなっている。
by crescentadv
| 2005-12-15 22:39
| チェチェン
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