Uncertain Odyssey


世界叙情記
by crescentadv
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殉教者たちの記憶

長い間戦いが続いていると、戦いそのものが風化していくということはありがちなことでもある。パレスチナでは、あまりにも長い間紛争が続き、むしろそれが生活の中での日常と化してしまった。現在でもそれが続いている。だからこそ、彼らはポジティブなのかもしれないし、だからこそ、未来へのより強い欲求を漲らせているのかもしれない。どの家族にも、一人や二人の死者を出しており、それを彼らはシャヒード(殉教者)と、尊敬の念を持って呼ぶ。戦闘が激しくなると、積極的にシャヒードになろうとする風潮さえ生まれてくるが、全体としては生きれるのなら、生きるべきだという考えがある。それが、イスラームであり、彼の地の連綿と受け継いできた文化でもある。
 今パレスチナは、政治的には難しい時代を迎えている。だからこそ、自分たちの生活を大事にしているし、より生活に目が向いているのではと思う。殉教者がいることが当たり前の光景。そのポスターも、いつか地中海の熱い日に光に晒されて、色あせ朽ちてゆく。それでも、殉教者の記憶は、永遠に人々の中に息づいている。誰かが生きている限り、その人たちが生きた証は、途切れることなく永遠の生を生きてゆく。
 ガザの日の光を浴びながら、白い砂の大地と白い壁の家々の中を歩く。いつしか、視界をも白いベールが覆い尽くし、白い闇の中で私はこの人たちの未来を、かすかに視界の中に捉えたような気がした。そんな私に時折視線を投げながら、パレスチナの女性たちは見事に洗濯物を干して、すぐに壁の向こうに消えていった。
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by crescentadv | 2005-12-05 23:24 | パレスチナ
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